横浜の創造都市
ヨコハマ創造都市センター
2013年11月14日
FAB9で生まれた社会関係資本をもとに「FabCity横浜の可能性を描く」セッションを開催したいと思います。横浜の創造活動をさらに高めたいと思われている企業、NPO、団体の皆さんの参加を期待します。先行するスペインバルセロナの基礎調査を進め、横浜市の現状やデジタルファブリケーション技術進展などの検討を加えて2020年横浜の未来図を描き、市への提案を試みます。
[2013年11月14日のトピック]
「横浜創造都市センター横浜市文化芸術創造都市の取り組み」と題し、横浜創造都市センター(以下YCC)職員のお三方に、YCCの取り組みを現場からお伝えいただきました。以下のアーカイブを一読いただけると、YCCのこれまでの取り組みについてご理解いただけると思います。また、本日使用したプレゼンテーション資料も添付してありますので、そちらもあわせてご覧ください。
横浜市の創造都市とは
創造都市とは、「芸術文化」「まちづくり」「産業振興」の政策を一体的に考え、横浜らしい魅力的な都市空間形成というソフトとハードの施策を融合させた都市ビジョンで、”創造界隈”(横浜の都心臨海部や関内、関外地区)を中心に活動を展開しています。
横浜創造都市センターの取り組み
・相談/コーディネート
YCCでは、アーティストや企業などを対象に相談/コーディネートを行っています。20130年度は97件の相談を受けています。主な事例としては、『FAB9』や『Borrowed Landscape-Yokohama(横浜借景)』などの活動支援、不動産活用、東急ハンズ横浜店閉店時のワークショップなどの企業・行政とのマッチングが挙げられます。
・助成事業
YCCでは、先駆的芸術活動支援助成、都市文化創造支援助成、創造活動支援助成、アーティスト・クリエーターのための事務所等開設支援助成、芸術不動産リノベーション助成という5つの助成事業に取り組んでいます。アーティストやクリエーターの創作活動の支援や、活動拠点の形成を支援しています。
・国際交流事業
YCCは、国際交流事業にも取り組んでいます。『TPAM 国際舞台芸術ミーティング』や『アーティスト・イン・レジデンス』を実施しました。『アーティスト・イン・レジデンス』では、成都からアーティストを受け入れるともに、横浜からも成都へアーティストを派遣し、滞在制作を行いました。
・創造都市プロモーション
YCCでは、創造都市・横浜の魅力を多くの方に知り、横浜を楽しんでいただくために、そして横浜を活動の場としてもらうために、創造都市プロモーションにも力を入れています。プロモーションサイト 「ウェブマガジン“創造都市横浜”」や、ヨコハマ創造都市センター 公式ウェブサイト、ヨコハマ創造界隈メールニュースを通して情報を発信しています。
横浜市の創造都市の現状
関内・関外地区の創造産業・創造拠点は年々増加する傾向にあり、横浜市は創造産業における事業所数は主要都市のなかで第4位です。YCCは、集まったアーティストが先の現場で展開する活動を支援するという役割と、行政と繋がる立場から引っ張っていく役割を同時に担っている中間支援的な組織として、今後もアーティスト・クリエーターを支援し、創造性を生かしたまちづくりを推進していきます。
YCC職員のお三方への質問
プレゼンテーションを受け、参加者からYCC職員のお三方への質問を行いました。
・YCCでの仕事のやりがいとは?
都市のインフラに直接的に関わってアーティストと町を繋ぐという新しいプログラムに取り組むことにやりがいを感じています。
大きなプロジェクトは地域が見えなくなりがちですが、このプロジェクトは地域との繋がりが見える。文化芸術とまちづくりという違ったことを繋げるという取り組みには、実現していないことを実現させているわくわく感があります。
試行錯誤の中で、最近自分がやろうと思っていることが上手く回るようになって来た実感があります。建築家やアーティストの役にたてている実感を得られることが、仕事のやりがいになっています。
・YCCでの仕事で一番苦労する点は?
新しい取り組みであるため、挑戦が多く、模索しながら進めなければならない点で苦労しています。
また、第一の顧客アーティスト、それを支える顧客(市民、大学)など様々な人が関わるため、異なる知識・技術を持った人にそれぞれの取り組みを説明するのが困難です。
自分の役割を果たせていないことを実感する機械が度々ありますが、創造都市の取り組みの良さを広めて、サポートする人を増やしていくことで今抱えている問題を解決できるのではないかと考えています。
助成金事業を担当する中で、芸術は作品の評価方法が曖昧なため、助成金で作られた作品に果たして意味があるのか確信がもてない時があります。
・アーティストではない市民の閲覧者以外での関わり方はあるのか?
例として、アーティストとオーナーの交流があります。アーティストがオーナーに興味を持ったことから交流が深まり、駐車場を展示スペースとして貸す、地域の掲示板の裏にアーティストが作品を製作する、といった相互的な関わりが生まれています。このような関わりを通して、美術や舞台演劇に関する理解が深まるのではないかと考えています。
・『YCCと同じような取り組みを行っている組織同士が情報交換する場はあるのか?』
創造都市ネットワーク日本(CCNJ)というものがあります。新たな取り組みなので、都市同士で情報交換をしています。
・『どのような都市にしたいと考えているのか?』
横浜らしくありたい。横浜の人々は、それぞれの中に自分自身の横浜のビジョンを持っており、それら全てを許容できるような都市にしたいと考えています。
横浜にはゆっくりした独特のペースがあるので、ゆっくりした人が好むような都市にしたいです。
・『アーティスト、クリエイターが集積するにつれて、まちのムーブメントが自己生成しだす編曲点があると思うが、今はどの段階にあるのか?』
それは局地的な問題で、例えば泰生ビルは編曲点を超えた。しかし、それが他の場所までは広がっていない状態です。泰生ビルのような状態は希有で、まだまだ種を蒔いて芽が出だした段階にあると考えています。その芽がまだ何なのか分からないのに、もう収穫しなさいと言われている現状で、もっとゆっくり進めていきたいが、産業振興的な観点から見入るとすぐに貢献度が問われる、というジレンマを抱えています。
『Fabに期待することは?』
工学系のものと人文系のものが融合しないと良い都市は生まれないと考えていますが、工学系にとってアートは予測不可能でやっかいなものです。この二つをvsにするのではなく、この壁を乗り越えることが重要で、この二つを融合させる役割をFabLabが果たせるのではないか、と考えています。FabLabには様々な切り口が存在するため、YCCの多様な活動を融合できるのではないかと期待しています。また、FabLabは出口論に対してどこまで現状を保てるのかということにも期待しています。SF的な話をつまらないところで終わらせないでほしいです。
ディスカッション
お三方への質問を受け、参加者の方々からディスカッションを通して様々なご意見を頂きました。
・市民、アーティストの相互参加の重要性
内発的な活動が自分たちの中だけで回っていく仕組みを継続させるためには、市民、アーティストの相互参加が重要ではないか、という議論になりました。自己生成の仕組みが完成しつつあるさくらWORKSの事例のように、市民がアーティストをリードするようなムーブメントが起きている場所もあり、様々な立場から市民の参加を問う可能性が存在しうることが分かりました。
・Fabの可能性
今回のプレゼンテーションを通して、YCCが創造都市の実現に向けて様々な取り組みをしていることが分かりました。お三方への質問を通して、YCC の取り組みが抱えている、「芸術文化」と「産業振興」を結びつけることの困難さという問題点も見えてきました。そして、そのなかで産業、文化芸術など今まで相容れなかったものを融合させる役割をFabが担いうるのではないか、という可能性が見えてきました。
・tool for resultからtool and resultへ
多くの人が道具を入れると結果を求める出口論の呪縛から逃れられずにいることが、問題として挙げられました。道具を入れたら一緒に変わっていくという考え方に切り替えることが、YCCの活動が抱えるジレンマの解消に繋がるのではないか、というご意見を頂きました。
・横浜のサブカルチャー
ファインアート自体には、日本全国を動かすほど強い力は無い。しかし、サブカルチャーが持っている価値は独特で高く、横浜はそれを大切にしていくべきではないか、という議論になりました。
[11月14日 授業資料]